東舞鶴北吸の小高い丘に「赤れんが配水池」という、旧海軍が作った浄水場跡地があります。「旧市民プール」すぐ横といったらわかりやすいかもしれません。長さ28メートル、幅23メートル、深さ6メートルの巨大な貯水槽です。
生命の源である飲料水のために造られた施設でしたが、その目的は命を奪いあう戦争でした。終戦後、市民のための飲料水供給施設として使われましたが、しばらくして水を抜かれ廃墟となりました。2011年頃、一般公開のために建物を開けてみると、どこから落ちたのか、水もない貯水槽の底は動物たちの白骨でいっぱいだったそうです。舞鶴の人々が陽光降り注ぐ旧市民プールで生を実感していたすぐ横の話です。
僕は縁あって、4年間この赤れんが建造物と付き合ってきました。丘に一人佇み、風の音を聴いていると、生も死も等しく私たちの傍らにあることを思い出します。生命のうごめきから考えれば、同じ現象を違う呼び方で呼んでいるだけなのかもしれません。
豊平豪 2016年11月
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