しなやかな身体?

前回の人類学カフェで「最近テレビって高齢者向けになってない?」という話になりました。番組内容はともかく、CMされている商品まで高齢者向けとなると、若者のテレビ離れはもちろんとして、いよいよ高齢化社会が速度を増してきたということかもしれません。

多和田葉子さんが書かれた『遣灯使』という近未来を描いた中編小説があります。作中では70代は「箸が転んでもおかしい若い老人」とされ、90代で「中年の老人」、100歳を超えてようやく普通に「老人」と呼ばれます。若い世代はほんの少ししかいないうえに、「微熱を伴侶にした」五体不自由な状態です。

主人公の義郎は100歳を超え、曾孫と暮らしています。義郎は「(老人として)今できることは、(何かを遺すのではなく)曾孫といっしょに生きること」であり、「そのためにはしなやかな頭と身体が必要だ」と未曾有の時代に順応しようとしています。

頭だけでなく、身体のしなやかさ。僕はそれが最近気になっているのです。

豊平豪 2016年12月

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