フィールドワーク情景6

文化人類学のフィールドワークについて僕なりに書いています。(1)現場でじっくりとインタビューと観察を積み重ね、(2)ある集団に独特の習慣や考え方(異文化)を描き出し、(3)自分の文化圏の人に伝える。そのために会話や状況をできる限り<そのまま>記録しておきたいところです。

ところが<そのまま>っていうのが厄介です。テープで会話を録音し、一字一句紙に移し替えたとしてもOKとはなりません。相手との関係性や会話の人数。聞いた場所はどこで、どんな状況だったか。そういったあわいの部分も書いておかないと役に立たないのです。何の変哲もない石の前で話を聞いたとしても、それが相手にとって神様の前で告白するのに等しいのだとしたらどうでしょう。石が大事なポイントになってきます。

そして、それほどに注意深く記録したとしても<そのまま>になんかなりません。何かが抜けていくのです。でも、「だとしてもなお」という気持ちがどんな「記録」にも重要だと思うのです。

豊平豪 2017年10月

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