小学生の頃の話。クラスメートの一人から恥をかかされたと思ったぼくは、自分と同じ状況に相手を追い込んで同じセリフを投げつけてやろうと決意しました。努力を積み重ね(何をしてるんだって話ですが)、思い描いた状況に相手を追い込むことに成功。ぼくはついに決めのセリフを放ったのです。
ところがです。相手は動揺しないどころか、ぼくが恥ずかしがっていたことにすら気づいていませんでした。完全な一人相撲です。世界の片隅の小さな復讐劇はため息とともに終わったのでした。
今思えば、ぼくは最初から自分の感じ方にとらわれ過ぎて、相手をまったくみていませんでした。他人の考えや感じ方は実際にはみえません。ことばや振る舞い、表情などから何とかおし量るしかない。それなのに「思いこみ」がすぐむくむくと出てきて、心のなかでつくった相手しかみえなくなります。目の前にいる相手ですらそのまま向き合うことはむずかしい。思い出す度しみじみ思うのです。
豊平豪 2017年12月
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