フィールドワーク情景12

 アニメ映画『リメンバー・ミー』が公開されています。「わたしを覚えていて」というこの映画の舞台はメキシコの祝祭「死者の日」。死者の日については、2014年、ぼくは砂連尾理さん、西川勝さんと現地調査したことがあります。メキシコのお盆といえばよいでしょうか。祖先が帰ってくる日ですね。

 故人の写真を生前好きだったモノと一緒に墓地に飾り、親戚や友人がその前で夜通し過ごします。赤ちゃんならおしゃぶり、おじいさんだったらお酒。マリーゴールドのむせかえる匂いと街にあふれる骸骨の意匠。奏でられる陽気なマリアッチ。蝋燭の灯にうごめく人びとのなかに死者くらい混ざっていてもおかしくありません。

映画は実に巧みに祭りの風景を描写し、忘れられたときが死者にとってのほんとうの死であることを語ります。よい映画だったのでしょう。一緒に観にいった5歳の息子が、見終わった後、恥ずかしそうに僕の耳元で「映画で初めて泣いちゃった」と告白したのでした。

豊平豪 2018年4月

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