南国の脱獄

2月の西川さんのトークテーマは「逃げる」でした。「逃げる」といえば、ぼくが学生時分南太平洋の島国フィジーに滞在していたとき、現地の新聞に脱獄のニュースがかなりの頻度で載っていました。一番多いケースは近親者の葬儀中の脱獄。フィジーでは親戚集団ががっちりしているので(フィジー人は必ずどれかの集団に属している)、葬儀への参列義務は服役よりも優先されます。そして脱獄犯をかくまうのもこの親族たちです。ネットワークには警察や看守も含まれるので結構長く逃亡可能です。当時、脱獄犯による犯罪が社会問題になりつつありましたが、鬼気迫る感じではありませんでした。おそらくどの親族集団にも服役経験者はいるし、みんな叩けばほこりが出る身だからでしょう。

けっしてほめられた環境ではないですが、少なくとも誰も牢獄にいたという色眼鏡で囚人をみていませんでした。清濁込みで他人をみる。ぼくにはとても居心地よかったなあと思うのです。なかなかできませんけど。


豊平豪 2019年3月

シリーズとつとつ アーカイブ

0コメント

  • 1000 / 1000