もろもろの事情で、20歳のときから和菓子屋さんを手伝っています。気づいてみればもう19年。考えてみると、結構長いですね。
お店がある愛知県江南市では、5月頭に藤の花を愛でる祭りが開かれ、会場となる曼荼羅寺の境内は、藤棚から垂れ落ちる紫に染まり、甘い香りがいっぱいに漂います。毎年祭りの時期に、僕は店と会場にある寺の茶所を行ったり来たり。花見だんごとか、麩饅頭とか、ういろうなんかをせっせと搬入することになります。
一つの祭りと長く付き合っていると、時のうつろいが見えてくるような気がします。藤の花の咲き具合、茶所のおばさんたちやてき屋のおじさんたちの会話、お客さんの雰囲気、和菓子の売れ行き。小さくてささやかな手がかりから、時のゆらぎなかに人が「生きている」ことを知ります。
決して歴史に残ることはない一瞬の生の連続の中に季節がある。祭りはそれを実感として教えてくれます。田楽なんかをほおばるお客さんを眺めながらそう思ったりするのです。
豊平豪 2016年5月
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