髪の人類学カフェ

 6月の人類学カフェのテーマは「髪の毛」でした。提案したのは、「髪の美しさもてあましている」うら若き女性でした。

 立川昭二の『からだの文化誌』によると、髪は神に通じる聖なるものと考えられ、髪がその人の魂や生命力をあらわすものと考えられてきたそうです。人類学カフェでも、髪の呪術性や象徴性という話題が多く取り上げられました。

 最近、イラン映画の『別離』を観ました。イスラームの教えでは、女性は夫以外に髪を見せないようにスカーフをかぶります。理由は、「美しいものを隠しなさい」というコーランの教えにあります。古来、女性の美しさを髪で評価してきた日本とは、ずいぶん異なる髪への振る舞いです。日常の些細なところまで浸透してくる文化の力は、遠い異国との間でだけではなく、私たちの身近なところにもあるはずです。地域や世代による文化の違いにも、異なるものの感じ方、考え方があることを、ゆっくりと見つめていきたいものです。

西川勝 2013年7月

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