お粉トーク

 皿の上に用意された小麦粉を、砂連尾さんが軽くつまんで、ぱらぱらと落とす。その様子を周囲の人たちが、息を潜めてじっと見る。小麦粉に込められたメッセージを読み取るワークだ。すぐに答えを求めるわけでもなく、次の人も小麦粉を使って何かを伝えようと試みた。

 皿の小麦粉に指をゆっくりと動かす。川のような山のような形が描かれていく。静かな部屋で小麦粉たちがさまざまに形を変えて、みんなの視線を吸い寄せていく。話し合いでは、「よくわからないけれど、小麦粉の動きや形に、その人の確かな意思が感じられます」という意見が出てきた。

 ふだんは食材以外の意味をもたない小麦粉が、ある場面で厳粛な様子を見せた。「亡くなった母が天国で安らかに居られることを祈りました」という話を聴いて、観ていた人に納得の輪が拡がった。人は思いを言葉だけではなく、何にでも込めることのできる自由がある。そして、それを聴き取る想像力を育てることもできるのだ。

西川勝 2014年9月

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