足跡ダンス

 「今日はそくせきダンスをしましょう」と砂連尾さんが言う。「即席ダンス」と聞いたので即興ダンスみたいなものかと思った。が、「即席」ではなく「足跡」だったと分かったのは、脱いだ靴を人がいるかのように、ダンスしているつもりで6人が置くことを求められたからだ。自分の靴だけでなく、人の靴を選んでホールに置いていく。そして、しばらく靴たちを見つめていると、不思議な感じになってくる。靴の向きや間隔で、それを履いているはずの人の姿が浮かび上がってくる。脚の長さでは届かないほど離された靴からは、アクロバティックな動きが立ちあがる。不思議だと感じたのは、靴を動かしている人の実際の姿よりも、靴から想像されるダンスのほうが力強く迫ってきたからだろう。文楽の人形遣いよりも人形が活きているのと同じだ。

 このダンスを話し合って出てきたタイトルは、「透明人間ダンス」「靴は靴であって靴でないダンス」でした。次は何を踊らせようか。

西川勝 2015年11月

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