声と動き

 6月のダンスワークショップでは、声と動きの関係について考えました。二人が組みになって、相手の動きを見てイメージする声を出す。反対に相手の声に合わせて、そこからイメージできる動きをするという課題に取り組みました。日常の中で意味を持つ言葉や動きではないので、そこから想像されることを、どんな風に表現するのか、ずいぶんと戸惑いました。相手の声に自分の動きを添わせる場合、声の大小、強弱、高低、リズム、震えなどから相手の気持ちや自分に向けられた思いを察していこうとするのですが、分析的に頭で考えるほど、動きがギクシャクしてしまいます。目には見えない思いを捉えるには、かえって声の方を見ない工夫もされました。

 よく考えれば、声の持つ力は直接に身体に響いてくるのです。まだ言葉を話せない子供の声に親たちは、さまざまに応答します。考えてから動く以前の身体が声と交流して、対人的な関係の基礎を形作るのです。人生で確かに経験していることなのに、記憶の彼方に遠ざかってしまったことを思い出させるワークでした。

西川勝 2016年7月

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