バッタキウポポ

 北海道に行ってきた砂連尾さんが、あるダンスを紹介してくれました。アイヌの民族衣装で女性たちが輪になって踊っています。お辞儀をしたような格好で進むのですが、歌に合わせてリズミカルに膝を曲げたり、両手を体の前に突き出し、背中の後で合わせたりします。なにかユーモラスな動きです。

 これを皆で踊ってみました。そして、このダンスが何を表現しているのかを話し合いました。アイヌの暮らしにある共同作業、儀式や祈り、動物との関係など、いろんな意見が出ました。

 実は「バッタキウポポ」(バッタの踊り)というダンスは、昔にバッタの大発生で農作物が壊滅的な被害を受けたことを伝承するものでした。しかし主人公はバッタなのです。人間にとっては悲惨な災害も、バッタにとっては大豊作の出来事です。だから、ダンスにはバッタの喜びと力強さが込められていました。人間中心の世界観では思いも付かない意味です。自分の世界から飛び出す自由がダンスの不思議と魅力なんですね。

西川勝 2016年10月

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