6月のとつとつダンスWSは、参加者の靴をフロアのあちこちに置いて、それと踊ってみる内容でした。きちんと並べられた靴もあれば、重なるように置かれたもの、片方の靴がとんでもないところに置かれたものなど、それぞれの思いがフロアから立ち上がってきます。脱ぎ置かれた靴から、それを履いていた人の面影をさぐってデュオを踊るには、しなやかな想像力が必要です。
でも、考えてみれば、人はいろんな物と一緒に暮らしています。その人が身につける物の数々には、その人自身が染み込んでいるといっても良いかもしれません。形見の品に涙をこぼすのは、ごく普通の人間的な振る舞いです。人を想うとき、直接に対面しているときよりも、何かの物を手がかりに面影をしのぶほうが心情の深いところでの出来事になっているようです。
生きることの痕跡は、人の記憶にだけ残るのではなく、生きるうちに出会ったさまざまな事物の奥深くにしまわれているのではないでしょうか。
西川勝 2017年7月
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