ねずみ男の錬金術

 水木しげるを読み返しているのだけど、やっぱりねずみ男が好きだ。氏の名著『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズに登場する人間と妖怪のハーフで、全財産はぼろ布一枚。風呂に入らないから体は疥癬におおわれとにかく臭い。でも、特筆すべきは彼の脳に備わるとされる「夢見る機能」。これが善と悪がはっきりとわけられた鬼太郎の世界に毒を差し込み物語を動かす。

ねずみ男は「この機能がとても発達しているために、いつも前途になんだか素晴らしいことがあるような気がしている。だから毎日が楽しくてしかたがないという生活ができる」(『鬼太郎大百科』)という。

 「錬金術」という短編(『ねずみ男の冒険』)において、ねずみ男がまさにその「機能」について語る箇所がある。「錬金術は金を得ることではなく、そのことによって金では得られない希望を得ることにある」「人生はそれでいいんだ…」。なんの目的であれ道中を楽しめること。こんな機能があれば楽しそうですけどねえ…。


豊平豪 2018年8月

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