流浪の民になるには

 9月の最後はわけあってテレビのワイドショーばかり観て過ごした。気になったのは大阪の富田林警察署から逃走した30歳男性の逮捕劇。大阪府警が3000人態勢で追いかけたのに、48日間みつからず、逮捕されたのは逃走地点から350キロ離れた場所だった。

詳しいことはこれから明らかになると思うけど、彼は盗んだ自転車に「日本一周」とか書いて、なんだったらみんなにご飯もらったりして応援されていたらしい。今回の万引きでつかまらなかったら案外まだ逃げ続けていただろう。

どうやら「目的ある旅行者」という形なら、現代日本でもなんとか<流浪の民>でいられるみたいだ。目的がなければ不審者だけど、ゆるくても目的あれば「がんばっている人」になって、かえって目立たない。あとはたぶん何も所有しないこと。何かを「自分のものだ」と主張したとたん「お前は誰だ」と問い返されるわけだから。

この2つを守れば社会的に透明でいられるかもしれない。みなさんも逃げるときはぜひ。


豊平豪 2018年10月

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