ある人の匂いを嗅いで、それを踊りで表現する。そんなダンスワークショップをしました。ちょっとドキドキしますよ。
デオドラント商品があふれる現代においては、人の体臭は隠されるか、香料で覆われることがマナーになっています。コミュニケーションをとる場合にも、人と人との距離はお互いの匂いを感じるほどには近くないのです。
もともと夜行性であった哺乳類の祖先は、視覚よりも聴覚よりも嗅覚が鋭敏でした。しかし、直立歩行した人類は鼻が変形して嗅覚は衰えてしまったそうです。生き物は食べるものやパートナーを見つけるのに匂いを頼りにします。不快な臭いは自分にとって危険なものを知らせます。私たちの体と心の古層には匂いで動いてしまう生命の智恵があるのです。
人間は鼻の構造上、ゆっくりと深く吸い込まなければ、においを十分には感じられません。誰かの側でゆっくりと息をしてみる。自分を揺さぶる匂いがあります。
西川勝 2014年10月
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