せっかくマレーシアにいるので、『ハリマオ伝説』(中野不二男著、1988年)を読んでみました。映画やドラマに出てくる怪傑ハリマオのモデルになった、谷豊(1911-1942)についての本です。ご存じですか?
中野によると、実際の谷豊は大規模な盗賊団を結成していたわけではなかったようです。晩年、仲間たちと共に日本軍のための数々の工作活動を行っていますが、まったく成功していません。そうこうしている内に、マラリヤにかかって亡くなってしまう。華やかさとは無縁の30歳の人生です。<ハリマオ>としてよく知られている伝説は、彼の死後、日本軍がプロパガンダのために創り上げた物語です。
ただ、谷豊がいなかったら<ハリマオ>は生まれなかったし、<ハリマオ>がいなければ、谷豊のことを我々が知ることもない。「歴史上の人物」とは実体と虚構の間に存在します。だからこそ人々の心に残る。「事実に基づいています」って冒頭に書かれると話に感情移入しやすくなりますもんね。
豊平豪 2016年2月
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