ことばの前に

 たいていの大人は、わからないことが苦手だ。ときには、わからない相手に腹を立てたりもする。この世に生まれてしばらくは、わからないものだらけの世界を好奇心いっぱいに生きている。大人になって分別ができると、世界は色あせてしまうのか。

 砂連尾さんのワークショップは、わからないことだらけ。先日は、できあがったばかりの講演台と話をしてダンスをすることになった。とまどいのダンスのあと、みんなで話しあう。はっきりとは言えない感じを、なんとか言葉にしてみるのだ。からだで感じたことをことばにするのも苦労する。が、ちょっと待てよ、ことばにするのが早すぎないか。解釈や説明は生きた経験の元気をうばってしまう。ことば以前の世界で、ゆったりと遊んでみたほうがいい。「とつとつダンス」は、なにかが起こることを、あせらず、いそがず、楽しみながら待っているのだから。こんなことを、家のテーブルをさすりながら考えたのです。

西川勝 2016年2月

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