フィールドワーク情景2

前回、「状況のままに」記述することがフィールドワークの肝だと書きました。たとえば、あなたと誰かの会話を考えてみましょう。何か飲み物を前にして、互いにリラックスしています。気楽な間柄のあなたたちの会話はリズミカルに進みます。

さて、この会話をテープに録り、文字に起こしてみます。「あれってさ…」「うん、これがねえ」といった具合に意味が通じていないことに気づくでしょう。時間が立てば本人たちにもわからないかもしれません。

ドラマでの流れるようなセリフのやりとりは実際に会話で使ってみると不自然極まりないですが、現実の会話はその逆です。脈絡はないのに自然にしかみえない。そこには、ことばだけではなく、あなたたちの関係性や身振りなども刻み込まれています。これを<文化>として考えます。これには普通気づけません。浮かびあがらせるためにはまず「状況のままに」記述しようと努力する必要があるのです。

豊平豪 2017年6月

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