猿が行く

 子どもの頃、ふざけて猿の真似をしたことはありませんか。ぼくは名前が「まさる」なので、よく猿の真似をしては友達を笑わせていました。口をふくらまして、目をぎょろっとさせて、胸を両手の拳で叩いてゴリラのできあがりです。友達も笑うけど、自分も楽しかった覚えがあります。いつもと違う自分になるのは、子どもの夢でした。

 とつとつダンスワークショップで、砂連尾さんが「さあ、みんなで猿になって動いてみましょう」と言うなり、両手両足を使って床を蹴るようにして猿の走りを見せてくれました。ほんとうに、猿が一匹、部屋に迷い込んできたような感じでした。みんなも後に続いて猿になって走ります。すばやい猿もいれば、のんびり者の猿もいます。猿になっただけで、それぞれの個性がはっきりしてくるのが不思議でした。自分を揺すぶったときに顕わになるもの、それが個性なのかもしれません。

西川勝 2013年6月

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