桜の樹の下に

 出版社、瀬戸内人の浅野さんから本が送られてきました。『心を省みる』というお坊さんの書いた本です。「こんなに悲しい桜の花を見たことがありません」ということばが最初にありました。夫を亡くした女性の話です。

 もうすぐ、ぐれいす村にも桜の季節がやってきます。お花見も楽しみですが、一見すると華やかな花見の宴も、人知れず悲しみに沈む人もいるかもしれません。「若さとはこんな淋しい春なのか」と詠んだ夭折の俳人もいます。また、新生活への期待で春風を胸いっぱいに吸い込んで桜を見上げる人もいるでしょう。

 ひとりひとりに桜の花は語りかけます。ぐれいす村は老いも若きも集う場です。桜の花も一輪の美しさではなく、多くの花がそれぞれの咲き散る姿で美しいのです。

 お釈迦様は常緑の菩提樹の下で悟りを開いたといわれます。桜の樹の下に集い語らうわたしたちは、自分以外の人が見ている桜に思いを馳せてみましょうか。

西川勝 2017年4月

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