例年4月に開かれるバリアフリー展で、今年も話をすることになった。テーマは「認知症ケアとその先にあること」、今までとは少し違う内容にした。人が必ず迎える死について、看取りの側からだけではなく、自分も後に続く側として老いや死を考えてみたい。ぼくは哲学をしていながら、まだまだ五里霧中にいる。寝る前に布団の中であれこれ考え、不意に「死んでゆくとは席を譲ること」という言葉が浮かんできた。尊敬する植島啓司先生が理想的な死について、「ごちそうさまでした」と美味しいレストランを出るように人生を終わると言っていたのに影響されたのかもしれない。
自分の死を苦しみとしてではなく、後に遺す人たちのために、ご馳走が用意されている席を譲ることとして考える。看取りとは譲られた席の有り難さを受け取ることなのかもしれない。お互いが思いやり、お互いがより深くいのちに与ることが大切なのだ。人は一人では死ねない。
西川勝 2018年3月
0コメント