ゴリラの笑い声

 8月のとつとつ講演会のテーマは「笑い」でした。声を出す笑いと、声を出さない微笑みについて話をしました。笑いの攻撃性を強調した内容になったのですが、少し考え直しています。というのも、『ゴリラは語る』という本を読んだからです。著者は山極寿一さん、ゴリラの研究者です。その本によると、ゴリラたちは遊んでいるときに「グコグコグコ」という笑い声を出して「自分は今楽しいんだよ」と相手に伝えます。そうすると相手も「グコグコグコ」と笑い声を出して「同調」し、遊びを安心して続けるのです。この遊びを通してゴリラたちは共感の輪を広げていきます。これは人間の笑いを考えるときにも大切な視点でしょう。人間は笑い声を言葉に進化させてきましたが、言葉によって伝達の幅を広げた結果、共感は薄まってしまいました。共感という身体的な出来事が、理解という知的な操作に変化したのです。この変化がもたらす功罪について、じっくり考えたいものです。


西川勝 2018年9月

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