「愛のレッスン」東京公演

 「愛のレッスン」東京公演で、際立ったのは岡田さんの美しさでした。砂連尾さんと彼女のデュオに、観客は固唾を呑んで目を凝らしていました。何気なく舞台に現れたふたりは、じっと見つめ合って動く気配はありません。けれども、ふたりの間には何かが生まれて蠢きはじめている。そうとしか思えない緊張が広い会場に満ちてきたのです。視線を動かすことができずにいると、微細な指の動きが見えてきます。ふたりの指先から見えない細い糸が繰り出されていきます。

 こんな不思議な印象を持つのは、「愛のレッスン」が舞台作品として創作されているからです。音響や照明、音楽と映像、すべてのものが岡田さんと砂連尾さんのダンスを支えています。ダンスを飾り付けるためではなく、影になってダンスを輝かせていくのです。

 見えない美しさの輪郭を、ゆっくりとなぞるように砂連尾さんは踊ります。相手になにかを付け足すのではなく、際立たせるデュオ・ダンスには愛がありました。

西川勝 2014年12月

0コメント

  • 1000 / 1000