偽会話の底にあること

 アルツハイマー型認知症と呼ばれる人の間には、偽会話(ぎかいわ)と名付けられる不思議なコミュニケーションが、ときとして現れます。にせ(偽)の会話とされる理由は、お互いに言葉を交わしている者同士は自然な様子でいるのですが、その会話の内容は支離滅裂で外部の人からは全く話の筋道が理解できないからなのです。この偽会話を「とつとつダンスワークショップ」で実際にやってみました。

 ふだんは縁のない意味不明な会話を、意識して続けること自体が、かなり難しく感じられます。けれども、お互いの顔を見ながら言葉を交わすうちに、なにかが伝わってくる気持ちになっていきます。頭ではわからないのですが、身体には相手との応答感がうまれてくるのです。

 言葉の意味にまとめきれない声の調子や表情の変化に、お互いの身体が揺さぶられて、言葉の内容とは別様の身体のデュオダンスが始まるのです。言葉の底には交流する身体が息づいています。

西川勝 2015年4月

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