歩きながら考える

 この原稿を四国遍路の途中で書いています。今日は9番から10番札所まで一人で歩いてきました。口を開くことがなくても、自分のなかで言葉が入り乱れて踊っています。道端に咲く可憐な花、寂しげな廃屋の破れ屋根、はるか向こうに見える山並み、田んぼのなかにあるお墓、四国がぼくに語りかけてきます。

都会は人間のサイズに合わせた建物と道で埋まっています。歩くよりも乗客になってハイスピードで駆け抜ける毎日です。人間本来の移動ペースである歩き遍路で出会うのは、人間のサイズを超えた大きな景色、または、目を凝らしてようやく気づく繊細な生きものたちの姿です。都会での生活が人間中心で過ぎていくのに対して、歩いて思い知らされるのは自然のうちに生きる人間の姿です。

歩きながら、ゆっくりと、自分のまわりを見ることで、はじめて自分のありように気づくことができました。今度は、グレイスヴィルの近くを散歩してみたいものです。

西川勝 2015年5月

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