千鳥さぶれという上品で美味しいお菓子があります。この前のダンスワークショップでは、この焼き菓子の半分を5分かけて味わうと世界がどんなふうに変化するのかという課題が出されました。みんな黙って時計を見ながら食べました。ふだんならサクッと噛じって口の中でふわっと溶けてしまうお菓子です。話し合いでは、いつものペースで食べた方が美味しいという意見が多かったのですが、自分が咀嚼する音が気になったり、部屋の空調の音が妙に聞こえてきたり、自分の周りの空気がお菓子の香りと混じってきたという感想もありました。
食べることは生きること。とても大切な行為なのですが、忙しい日常では、ゆっくりと味わうことは少なくなっています。ゆっくりと食べることが食べ過ぎを防いで健康によいだけではなく、ゆっくりと味わうことで、自分を取り囲む世界への感受性も鋭敏になるようです。食べ物を身体に取り込むだけが食事ではなく、味わいを口の中から世界にまで広げてみる食事もあるんですね。
西川勝 2017年2月
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